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2015年12月20日 (日)

部屋から見えてくる孤独と苦しみ

※この話は事実に基づいた、完全なフィクションです。

前回からのつづき

前回はこちら
http://maruko-psw.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-1682.html



私は、ごみ屋敷と言われてしまうような部屋へ訪問させてもらった場合、


初回の訪問では、あまり根ほり葉ほり聞くことはしない。



受け入れてくれたことへの感謝を伝え、継続してこちらが関わることへの承諾を得られれば十分だと思う。



ただでさえ、罪悪感や恥ずかしいという思いがあるのに、面と向かって色々と聞かれることは、苦痛だと思うからだ。質問しているつもりでも、このかたの状況を責めているように思われたくない。



私は、これまで多くのかたの所へ訪問させていただいた経験から、そのかたの部屋を見れば、どんな思いで日々暮らしているのかが、何となくわかるようになっている。




このかたの部屋から感じたのは、

何年も混沌として思い通りにならない部屋と体調、そしてそれについて誰にも相談せず、自力でなんとかしなければという焦りと苦しみ。



何よりも、計り知れないほどの 「孤独」が、見て取れた。




必死の笑顔で応対してくれるそのかたの姿に、胸が痛くなった。



積み上がっている段ボールの中から見えた、高価な衣服や小物について聞いてみると、


「ああ、あれは働いていた時に使っていたんです」と恥ずかしそうに話してくれた。きちんとしまってまた使いたいけれど、なかなか出来ないでいるのだと。


難しそうな書籍や資料も山ほどあり、理数系の、私にはまったくわからない記号や数字ばかり。大学受験の時に使う「赤本」も各種大学のものがたくさんあった。
買って読んだり勉強することが好きだったのだという。



ジャズやクラシック、懐メロのCDもたくさんある。
音楽も好きなのだとわかる。



捨てられずにたまっていく日々のごみの中には、そのかたの好きなものや大切なものがたくさんひそんでいる。




・・・なぜ、バリバリ働いていいたかたが、ここまでの状況に落ちてしまうのだろう。


その時と今との落差に、きっと苦しんでいるに違いない。


これまで何があったのか、精神医療がどのようにこのかたを治療?して来たのか。


薬は何を飲んでいるのか。ご家族や友人は?

そして何より、これからどんな生活をしたいのだろう。


聞きたいことや、一緒に考えたいことが、私の頭の中にあふれかえった。


とりあえず今回は現状を確認し、残っているわずかな食材をどう使って何日食いつなぐかという助言をした。


また、今回限りという約束で、こちらで米を代理購入し、保護費支給後に返金してもらうという緊急対策を提案。そのかわりに、金銭管理や生活面での具体的な援助を、私たちがすることを受け入れてもらい、初回訪問を終了した。



まだ次の保護費支給まで3週間以上あることへの金銭面の不安や絶望感が和らぎ、安堵された様子が見て取れた。




私たちは定期的に訪問させてもらい、部屋の整理を一緒に始めることにした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


このように、相談すること、援助を求めることをせず、極限まで我慢して頑張るかたや、そもそも困っているという意識がないまま状況が悪化していくかたは、地域にたくさんおられる。


私は、そういう状況のかたに対して、まずは、何でもいいから声をかけ続けること。つながること。そしてそれが継続されるように、相手の状況や希望を最大限尊重することを、いつも大事にしている。




聞きたいこと、一緒にやりたいことがあっても、進展がなくても、こちらの想いや都合で、考えを押し付けたり、焦ってはならない。


私は地域のソーシャルワーカーであり、行政のような権限は何もない。
むしろ、そういう権限などは、使いたくもない。


私たちの関わりは、そのかたとの信頼関係ありきの援助であり、わかりやすく言えば、「嫌われたら終わり」。


このかたとの関係も、ここからが本当のスタートだ。




そしてその後、さらにこのかたの苦しみや過酷な状況に向き合うことになった。





次回へ続く


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